研究所の設立趣旨

全人的健康の推進

私達、人間性探究研究所は全人的健康を推進するNPOです。

近年、こころのトラブルが大きく取りざたされています。

 

「健康」で「優秀」とされていた人材が、知らぬ間にウツに蝕まれ、第一線から降りざるを得ない事態。最悪は自殺・・・・・。このようなことが日常茶飯事に私たちの周りで起こっています。

 

そんな中、こころのトラブルへの予防や対処法を模索して脚光を浴びだした心理学や脳科学など、こころを知ることが異常なほどの関心をもって茶の間に迎えられています。

 

しかし、こころのトラブルは「知ること(知識)」だけで解決に向かったのでしょうか?

 

私達は、様々な要素が絡み合ったものを一概に決め付けるわけにはいきませんが、こころのトラブルが大きな社会問題にまでなった根本原因はいのちの免疫力低下にある、言い換えれば、現代人のからだとこころの免疫力低下にあると考えます。

 

私達は、「免疫力の高いからだに免疫力の高いこころ」の根幹をなす、「整ったからだと整ったこころが両備している状況」、即ち「パワフルにいのちが躍動する状況」を「全人的健康」と称し、人生の土台となるべき最も重要な要素と捉えています。

 

全人的健康という土台の上にのみ、本来の持てる自己の能力をいかんなく発揮することができ、何をもっても崩されることの無い堅牢な自己実現をかなえるものと考えるからです。

 

では、全人的健康に指向する、その起点となる「整ったからだと整ったこころ」を得るにはどうしたら良いのでしょうか?

 

現代人は「知ること(知識)」からトラブル解決の糸口を探ります。しかし重要な点はその後の過程、知り得た知識を自らの体で体感し、そこからの気づきを体質化にまで至らしめるプロセスが、なによりも肝要であると考えます。

 

私達は、その為の実践的ポイントが3つあると考えます。

 

第1に、からだを整えるために動物本来の基本姿勢を身につけること、第2に、こころを整えるために、常時、自己のこころを映し出す自覚的意識を養うこと、そして第3に、からだとこころの架け橋役としての呼吸を整えるために横隔膜呼吸を習慣化することです。

 

現代社会の価値観では見落としそうな、これら3つのポイントがシンクロナイズして、始めて、全人的健康の実現に向けて始動しはじめるのではないかと考えます。最先端科学から得られる知識と、三千年にわたり醸造されてきた東洋の体験的智慧とが一つになった瞬間です。

 

その、全人的健康への階梯を一歩一歩上って行きます。自分のこころの状況を自己診断し、自覚的意識のレベル判定を受け、上記3つの実践的ポイントを日常生活の中で実践する。これらのプロセスをスパイラルアップさせていく事により、全人的健康のレベルがぐんぐん高まっていくのです。

 

これら一連の方法を、当研究所ではマインドトーク洞察(諦観)法と称し、全人的健康を実現するための有効な方法だと考え推進する活動を行っています。

「健康で、生き生きと、自分らしく、そして人間らしい生活を送りたい」と多くの人は望んでいます。

 

その「健康で」といった言葉には、個々人の深い思いが込められており、決して一つの側面だけで捉えられるものではありません。科学的、哲学的、心理学的な概念などが入り混じったところに人間の「健康」への概念はあると考えられます。「全人的健康」とは、それら全てが満たされるものを言うのでしょう。

 

しかしここで、全人的健康をテーマに掲げて議論しようとする時、二つの問題にぶつかります。

 

一つは、「健康で」「生き生きと」「自分らしく」「人間らしい」といった言葉が正確に定義されていないこと、二つは、その内容があらゆる側面から総合的に捉えられていないことです。

 

ですから、いくら議論を重ねても空転して、内容に深みを増すことはありません。

 

私達は長い間、健康に関わる問題の多くを科学の領域のみにゆだねてきました。特に戦後、科学的なものでなければ健康の領域に加えることすら懸念されてきた嫌いがあります。

 

健康の概念視野を「物体としてのからだ」という狭いところに置いてきたせいでしょうか。いま、「物体としてのからだ」だけでなく「こころが作用するからだ」までを対象とする全人的健康への道を拓こうとするとき、これまでの偏りを廃除して、新たに健康概念の視野を拡げなければ、上の二つの問題解決は難しいのではないかと考えます。

 

20世紀半ば、西洋にも従来の科学偏重に対して警告を発する哲学者(注.1)がいました。「物体としての人間」を捉えるばかりではなく、「なまの生きている人間の直接的体験」も科学探求の対象にしていかなければならない、というものです。

 

現在その思想は、人文科学と自然科学を交差させたところに位置する新しい「認知科学(神経科学・脳科学・言語学・認知心理学・哲学など)」の領域で、欧米を中心とする研究者に引き継がれています。

 

彼らは、「直接体験」の宝庫である東洋の伝統文化に焦点をあてて認知科学的な視点から分析し、「なまの生きている人間」を解析して「人間とは何か」「人間らしいとは何か」「こころとは何か」「生きるとは何か」を語るのです。

 

また、物理学者(注.2)にも、デカルト的な「わたし」と「世界」という根本的分離に端を発する世界観が、「過度な自己主張」「過度な知識偏重」「過度な科学万能観」「過度な競争主義」などの「過ぎた偏り」をもたらし、現代社会の様々な領域に危機を招くと警告、東洋文化との融合にその解決の糸口を見出そうとしている人がいます。

 

大勢の先端的な学者の眼が東洋を向いているのです。

 

これらの状況から、私達は、最先端科学から得られる「知識」と、これまで東洋で三千年にわたり醸造してきた直接体験から生まれる「智慧」との二側面を融合して「新たなもの」を創造し、国内外に発信するときではないかと考えます。

 

それは、「『全人的健康』への教育・ケアーシステム等の研究開発」で、「健康で、いきいきと、自分らしく、そして人間らしい生活を送りたい」と望む人々に貢献する事を目指すものです。

 

註.1モーリス・メルロ=ポンティ(1908~1961年)主著に『行動の構造』(1942)、『知覚の現象学』(1945)など

註.2フリッチョフ・カプラ(1939年~)主著に『タオ自然学』(1975)、『ターニング・ポイント』(1982)など

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